
アルフレッド・ウォーレスのインドネシア分析
- イギリス人の生物研究家であるアルフレッド・ウォーレスは、同じ時期にダーウィンの進化論「種の起源」の論文と似ているタイトルで生物進化論を発表。しかし、当時のイギリスの学会は、双方とも内容も似ているので、題目を代えることを要求、ダーウィンは「種の起源」、ウォーレスの論文は「マレー諸島」となったと言われる。ダーウィンの「種の起源」の趣旨は生物の進化は突然変異を除いて、自然淘汰とオスとメスによる生物の性淘汰により進化したとした。これに対し、ウォーレスは地球環境の激変等、天変地異による生物の生存淘汰を分析、南米その他も探検したが、特に、インドネシアを中心に生物の生態進化を推論した。何故、インドネシア諸島と命名しなかったかと言えば、ギリシャ語由来のインドネソスとはインド諸島になり、今のインドネシアを意味せず、アンダマン諸島からかなりの遠隔地まで広がる地域である。これに対し、ムラユネシア(マレー諸島)で有れば、現在のインドネシア周辺を意味。この「マレー諸島」を読めばインドネシアの多種多様の生物の生態の背景が理解できる。
- 1.インドネシアでオランウータンはスマトラとボルネオだけにおり、何故ジャワ島その他の島にいないのか。インドネシアにはスマトラとジャワを分けた天変地異の伝説がある。また、オーストラリアの動物とインドネシアの動物が全く異なるのは何故か。
- 2.イギリス人の生物研究家で探検家のアルフレッド・ウォーレスは、著書「マレー諸島」の中で、インドネシア諸島は過去何回かの氷河期に海面が低下しスンダ大陸が出現、間氷期には大陸は水没し島嶼を形成した。火山の隆起によりある時はジャワ島だけ水没し、ゾウ、バク、クマ、オランウータンはスマトラ島とボルネオ島のみ生き残り、ある時はボルネオだけ水没、トラはスマトラ島とジャワ島に生き残り、同様にジャワにいる孔雀はボルネオ、スマトラには見られない。
- 3.動植物学的に見てスマトラはジャワよりもボルネオに近い。ジャワとボルネオは400キロ以上も離れているのにサル類、野生牛、リス類、ネズミ類22種の共通動物がおり両島は過去に繋がっていたと記している。
- 4.バリとロンボック島の間で動植物の変化があり、ウォーレスはアジアとオセアニアの動植物相の境界線〔ウォーレス線〕を発見した。オーストラリアは孤立し、類人猿やサル類、山猫、トラ、狼、クマ、ハイエナ、鹿、牛、ゾウ、馬、リス、ウサギはいない。その代わりにカンガルー等有袋類〔原始的哺乳類〕がいるのみ。カンガルー、オポッサム、カモノシカ、鳥類も独特で、生物学的に見てインドネシア諸島の東半と西半は地球の区分の別の属にあり、先住民族も根本的にマレー系とパプア系に区別されるが、氷河期にはウォーレス線を境にスンダ大陸とオーストラリア・ニューギニアが一体となったサフール大陸があった。
- 5.マダガスカルのレムール・キツネザルは何故スラウェシ島、アフリカ、スリランカと離れたところにも点在しているのか。又、スラウェシ島の生物は多くの特殊性を持っている。ウォーレスは、スラウェシ島はユーラシア大陸と中世代ジュラ期前期から南半球に広がっていたと言われるゴンドワナ大陸と衝突.合体したインドネシアの中で最も古い部分で、各地の絶滅種が存在していると記している。
- 6.スラウェシ島はジャワ、スマトラ、ボルネオ島が分離、又、水没する以前よりあった。また、インド洋にアフリカとインドネシアを繋ぐレムール大陸があったとする説によれば、レムール・キツネザルの生息の中心はマダガスカルで、アフリカ、スリランカ、スラウェシ島にまで分布している。
- 7.スラウェシ島特異の種のバビルサ〔鹿ブタ〕はアフリカ・イボノシシに近く、近隣アジアには存在せずアフリカのみ存在するが、これは、人間も含め動物達はレムール大陸を経てアフリカからインドネシアまで移動、その後、大陸、島嶼の水没により中間に位置する動物は消滅し残った島に分布したものと思われる。アフリカの人とパプアの人が似ている背景はこれらから理解できる。