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インドネシアあれこれ

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インドネシア首都移転

インドネシアが世界第4位の世界経済大国になる為の必須手段と日本への期待
インドネシアの首都がジャカルタから東カリマンタン州へ移転する計画は、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が2019年に発表、2022年1月18日、 インドネシア国会は首都移転法案を可決。インドネシアが将来大国になる為には、資源が豊富なジャワ島以外の外領に首都を移転する必要があると言われていた。資源・人口大国のインドネシアは、IMF、世銀は購買力平価ベースで経済規模では2035年には日本に次ぐ世界第5位、2045年には日本を追い越し世界第4位になると予測。インドネシア政府もその目標を掲げている。首都移転の期間は3段階に分けて行われ、2022年から2024年の第一段階、2025年から2035年の第二段階、2035年か2045年までが第三段階。新首都はあくまでも政治・行政都市で、ジャカルタは経済、貿易、ビジネス、教育、芸術、文化等の中心都市として今後も発展が期待される。
1.首都移転計画の経緯
(1) ジョコウィ大統領は2019年4月29日の政府閣議に於いて首都をジャワから移転することを決め、同年8月26日、新首都は東カリマンタン州の北ぺナジャム・パサール県とクタイ・クルタヌガラ県の行政地域に建設すると発表。更に、インドネシア国会は2022年1月18日、首都を東カリマンタン州に移転する法案を可決。前日、1月17日、政府と 地方代表議会(DPD)及び国会特別委員会で、担当の国家開発企画省スハルソ・モノアルファ大臣は、新しい州都はヌサンタラと名付けると述べ、翌日法案可決した。
(2) インドネシアの首都をジャカルタから他の場所に移転する案は、スカルノ元大統領、スシロ・バンバン・ユドヨノ前大統領以来議論されており、特にユドヨノ大統領は、ジャカルタの環境問題と人口過剰問題解決の為、インドネシアの政治行政都市を新たに創設するという考えを支持していた。
2. 新首都のロケーション選択の理由
(1) ジョコウィ大統領によると、 東カリマンタン州に位置する新首都は地震・津浪・火山等地域の自然災害のリスクが小さく、インドネシアの中央に存在、地方の大都市バリクパパンとサマリンダの中間地点にあり、総面積は25万6000ヘクタール、移転経費総予算は466兆ルピア(約3兆7000億円、ドル・べースでは350億ドル)で2割を国費、残りの80%の経費は国内外の民間より調達する計画。
(2) この地域は4世紀末から5世紀にかけてインドネシアで最も古いヒンズー・バラモン教の遺跡を残したクタイ王国が栄えた場所で、この王朝はサンスクリット語で刻まれた碑文の記述から、古代インドのデカン高原のカダンバ朝で用いられた書体であることが最近の研究で判明している。クタイ王朝の繁栄は、当時の商業上の交易ルートがマカッサル海峡を通っており、インドからの船はクタイに寄港、フィリピンを通過したのち中国へ向かっていたと考えられている。古くからクタイ王朝の存在は知れ渡っていたと思われ、15世紀にコロンブスがアメリカ大陸を発見する航海の際に用いた世界地図にはユーラシア大陸の最東端はクティと記されていたと言われる(NHKテレビ放送大学)。
(3)今回の新首都移転はインドネシアの歴史上、最古の王朝があった場所に移転するという民族ナショナリズム的には伝統復古主義に基づき、近代的スマートシティー方式を採用、デジタル最新鋭のIT技術を駆使する未来都市の建設でもある。日本で言えば平城京の奈良の古の都に東京から遷都する様なものであるが、インドネシアにとって将来的にはアジア太平洋共栄圏の拠点とする意欲的な構想をも想起させる。
3. 首都移転の問題点
(1) 環境保護主義者達は新首都移転によりカリマンタンの生態系に及ぼす影響と広範な被害の脅威に関し深刻な懸念があるとして、特にエミル・サリム初代環境大臣(スハルト時代の仏留学派)はその批判の先頭に立っている。更に、多額の資金を必要とする大規模な首都移転を必要とせずに、現在のジャカルタの深刻な洪水や交通渋滞の問題を具体的な対策を以て解決すべきであるとして、ジャカルタから首都を移転するプロセスに疑問を呈している。
(2) インドネシア・グリーンピースは、「世界の肺」と言われるボルネオの熱帯雨林の保全を脅かす可能性のある首都移転計画や、オランウータン種を含む希少生態系の破壊及び絶滅が危惧されると批判。更に、移転により新しい自然被害による森林火災や土地火災のヘイズ(煙害)のリスクもあるとして深刻な環境問題も惹起されると指摘している。
(3) 他方、プラボウォ次期有力大統領候補率いるグリンドラ党は当初、政治的イメージの為だけに東カリマンタンへの首都の移転計画の緊急性に否定的な反応を示し、民間および外国に資金を過度に負担する首都移転計画に警戒感を示した。また、野党の PKS(福祉正義党)は新しい首都を建設するプロセスに外国(中国)の当事者が参画、計画的に関与しているのは問題であると批判、国内の専門家の能力は自国の首都を建設するのに十分であるとして、移転に反対している。
(4) 次期大統領候補の一人であるリドワン・カミル西ジャワ州知事も新首都の為の広大な地域の提供は土地の無駄使いであると批判。これらの批判に対して、ジョコウィ政府の決定が拘束力を持ち、次期大統領によって変更されないように現政権は早期に法律を通過する必要性があり、今回の首都移転計画に関する法律を可決したとも言われている。
4. 首都移転と日本への期待
(1)首都移転経費の海外民間資金は中国、日本、韓国、近隣アセアン諸国、および中東産油国より調達する計画。具体的にはルフト・パンジャイタン海事・投資調整大臣が資金調達を担当。スイスのダボス、中国、日本等で主要銀行を招致し投資セミナーを開催、同調整相は中国、アラブ首長国連邦、ソフト・バンク・グループその他より首都移転計画に最大400億ドルの投資が集まる旨述べている。
(2)孫正義ソフト・バンク会長はルフト・パンジャイタン調整大臣と共に数回ジョコウィ大統領を表敬、記者団に対し具体的な投資額は提示していないが人工知能(AI)を使った新たなスマート・シティー建設、最新技術を伴うクリーン・シティーの支援に興味を持っていると述べている。
(3)インドネシア政府は首都移転政府系投資ファンド審議会を立ち上げ、ジョコウィ大統領自らアラブ首長国連邦(UAE)を訪問、ムハンマド皇太子とファンド設立について会談した。スイスのリゾート地ダボスで開催された世界経済フォーラムに於いても本件資金調達について発表、現在まで報道によればインドネシア政府は首都移転投資ファンド審議会のメンバーとしてアラブ首長国連邦ムハンマド皇太子、英国のブレア元首相、孫正義氏を任命している。
(4)法制化により2024年から本格的に新首都移転を開始計画予定となった。その前段階から関係省庁は少しずつ省庁を改変、準備のための省庁機能移転を開始。移転最終完了は2045年を目指し、2021年は既にインドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN)が創設されBATAN(原子力庁), BPPT(科学応用評価庁), LIPI(国立科学院)等の研究機関はBRINに統合された。長官その他多くの幹部は日本留学生で、所謂ハビビ留学生と呼ばれている円借款留学生達。彼らは技術系公務員としては最高レベルのエスロンⅠ(第1等級国家公務員)という各省庁次官、総局長クラスを占め、首都移転計画における日本に対する期待が大きいものと思われる。中には、既に日本の大学教授として教職に就いている者も新設省庁に登用されている。
5.新首都「ヌサンタラ」の意義とインドネシアの発展及び日本の協力意義
(1)インドネシアは世界有数の資源大国、その大半は東部インドネシアに存在している。特にパプア、マルク、スラウェシ、カリマンタン島各地には金銀銅、石炭、ニッケル、マンガン、希少金属、石油・LNG、農林水産資源等豊富で未開発のまま手つかずに残っている地域もある。世銀、IMFは、今後インドネシアは2035年には経済規模は日本に次ぐ世界第5位、2045年には日本を追い越し世界第4位になるものと予測しており、その為には東部インドネシアの開発専門家育成が急務であり、日本政府は官民挙げて人材育成事業を支援している(JICA円借款、民間とバペナスとの協力)。
(2)以上の計画が実際に実現するか否かはその資源と人材の活用如何である。ジャワ島中心の政治経済体制では限界があり、以前からスラウェシ島出身のハビビ元大統領は東部インドネシアの開発と人材育成を日本に依頼、日本は現在まで40年間に亙り協力(日本インドネシア科学技術フォーラム等)、多くの有能な人材を育成(1000人の技術・理工系博士を育成)、今、彼らを活用する時期が来たと言える。
(3)日本の財界は護送船団方式で対インドネシア協力を実施しようしており、財界もODA・公的資金(JBIC)有りき前提で動いている企業が多い。今やインドネシアは産官民学連携協力を標榜、エネルギー、環境、スマート・シティー、新幹線・高速鉄道、港湾・空港等のインフラ・プロジェクトは中国に後れを取っている状況。最近ではEV競争に中国、韓国が参入しており、日本としても効果的な産官民学連携協力方法を模索・実施する時期であると考える。.
(4)しかし、今まで日本の官民を挙げた対インドネシアの人材・資源開発技術協力は夜空の星の数ほど、賠償留学、文科省留学生、大学間、JICA、円借款協力により、鉱工業エネルギー、原子力、トンネル、橋梁、医療・保険、農林水産、工業、環境、放送、ものづくり等殆どの分野において実施済。過去の協力実績を踏まえ、人材活用を図るべきである(地方に行けば日本留学、研修生は多い)。
(5)アジア・インド・太平洋の連携協力時代は既に始まっており、その中心は地政学的、経済流通の観点から見てもインドネシアがその拠点。中国の一帯一路の海のシルクロード通商航海路はインドネシアが最重要国として位置付けられている。
(6)今後、重要な対インドネシア協力分野として、有機農林水産、環境保全、脱炭素新エネルギー開発(含む原発)、ハラル食品を含む食糧生産、日本の伝統技術を含む醗酵バイオ協力、産官民学協力による新規イノベーション共同開発(日本の博士号を取得している人材が1000名以上存在)、自然災害防災協力、以上は殆どの分野で日本からの対インドネシア技術移転協力は終えている。1981年、ハビビ大臣と中川一郎当時科技庁長官との間で締結した日本インドネシア科学技術協力協定により実施(必要経費は円借款を活用)。